技報第14号
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該損傷橋梁数を示したものであるが,1975年以前に竣工した橋梁に多く,それ以降では大幅に減少している. ここで,わが国のPCグラウト技術の変遷について述べる.わが国初のPCグラウトに関する技術規準は,1961年に発刊された「PCグラウト指針案」(土木学会)である.その後,一社)プレストレスト・コンクリート建設業協会では,1986年発刊の「PCグラウト施工マニュアル」を初めとし,2013年発刊の「PCグラウト&プレグラウトPC鋼材 施工マニュアル 2013年改訂版」に至るまで,PCグラウト技術に関する改訂を重ねてきた.その中で,1980年代以降のノンブリーディング型PCグラウトの登場と普及,さらに1996年の流量計の設置義務化など大きな技術の改良が進められてきた. さらに,構造の改善として「建設省標準設計」では,1980年および1994年の改訂で段階的に上縁定着が排除された.これにより,1980年代より徐々に上縁定着は姿を消していくことになった. 一方,海外では,1985年英国において,PCグラウト充填不良の起因によりYnys-y-Gwas橋が落橋し,同国では,1992年~1996年の間,グラウトを用いるPC橋を禁止している. グラウト注入技術の改良,上縁定着の廃止,さらには落橋事故などによるグラウトの重要性が見直され,グラウト不良が減少し,シースに沿ったひび割れの発生が減少していったのではないかと考えることができる. 4.おわりに 当社が取り組んでいる既設PC橋に対する継続的な点検・診断について紹介し,この点検において発生頻度の高い1つの損傷について考察した. ポストテンションT桁のシースに沿ったひび割れについては,グラウトや注入方法の改良方法といった技術の進歩により,損傷の発生が少なくなってきていると考えられる. わが国の現状を考えれば,これまでに建設してきた膨大なインフラストックをメンテナンスしていかなければならない.そのためにも点検は重要な作業であり,専門技術者が点検し,その結果をフィードバックする取組みには価値がある.今後も,PC専門業者として培ってきた経験的知見を活かし,本取組みを続け,メンテナンス技術や新設橋梁の設計・施工に反映させていきたいと考えている. 参考文献 1)玉越,小林,竹田,平塚:道路橋の健全度に関する基礎的調査に関する研究-道路橋に関する基礎データ収集要領(案)-,国土技術政策総合研究所資料No.381,平成19年4月 Key Words:点検・診断,データベース,ポストテンションT桁橋,PCグラウト 雨宮美子 写真-1 主桁シースに沿ったひび割れ 写真-2 主桁シースに沿ったひび割れ (下フランジ) (ウエブ) 図-3 主桁シースに沿ったひび割れが見られた ポストテンションT桁橋梁数 0510152025302005~1995~1985~1975~1965~1955~(件)(竣工年)該当損傷なし該当損傷あり技報 第14号(2016年)29

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