技報第14号
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3.PC架構およびPC部材の特徴 3.1 PC架構・部材の構造概要 PCaRC柱は主筋をモルタル充填式スリーブ継手で接続する方式である.桁梁は梁中央部に分割目地を設けた柱付きPCaPC梁(PC圧着レンコン梁)で,梁同士はPC圧着接合で剛結される.柱とレンコン梁は柱頂部から突出させた主筋をレンコン柱型の主筋位置に配置したシース(最長1.7m)に貫通させた後,高強度の無収縮モルタルを柱型天端から流し込むことで脚部目地と柱主筋シース内にモルタルが充填されて一体となる.梁間方向はプレテンションが導入されたPCaPCスパン梁である.写真-2~3にPC圧着レンコン梁を示す. 写真-2 PC圧着レンコン梁 写真-3 レンコン柱型天端面 3.2 PC架構・部材の問題点と改善 桁行全長の108.16mに渡ってプレストレスを導入すると梁の軸縮み変形に伴う過大な不静定2次応力が外端部材に生じる.PC圧着接合で梁を柱に剛結する従来の接合方法ではこれを処理できずに設計不能に陥る可能性があった.新病院ではPC鋼材と柱梁接合部に通し配筋された主筋との併用で必要な高耐力を確保しながらPC鋼材ならびにプレストレスを最小限に低減できるPC圧着レンコン梁が採用されている. 一般にPCaPC梁の圧着接合目地部はせん断摩擦伝達で抵抗する設計法が採られるが,100mを超える長大建物では中間部に近づくほどプレストレスの減退量は大きくなり,目地部の圧着せん断耐力が不足するおそれがあった.新病院では桁梁接合面に粗面処理を施し,従来の摩擦係数に換えて既往のせん断試験で得られていた粗面に対する摩擦係数を適用することで必要な圧着せん断耐力が確保されている. 長大架構へのプレストレス導入により桁行の最外端柱では2次緊張時だけで約9mm内側に倒れる可能性があった.新病院では全長を3等分して境目となる2スパンを緊張緩和区間に設定し,3等分区間でそれぞれ2次緊張を行った後,緊張緩和区間の梁主筋を機械式継手で接続,3次用シースとあばら筋を配筋してコンクリートを打設し,全長にPC鋼材を通線して3次緊張を行う方法が導入された.これによって3次緊張完了後の倒れ変形量の推定値は約5mmに低減されている. 4.PC工事概要 4.1 PC工事の工程 PC部材の製作は6ヶ月で想定した.PC工事は緊張緩和区間を境とした3工区分けとし,7ヶ月で完了する計画とした. 4.2 PC部材の製作計画 柱とレンコン梁は部材数が216pずつ,総重量は柱が1,576t,梁が1,896tである.スパン梁はプレテンション部材で部材数は144p,総重量は1,964tである. 4.3 PC部材の搬入・架設計画 新病院は既存病院を運営しながら建設することが求められたため,作業範囲は極めて限られた.そこで,新病院北側の狭小な横長スペースに350tクローラークレーンを1台配置し,3工区分の全部材を架設する計画とした.部材の搬入は25tトレーラーを使用した.病院周辺は戸建て住宅が密集し,道路の幅員が4~6mしかないために,先導車をつけた部材搬入や警備員の複数配置などの搬入路に対する安全措置を講じた. 1工区あたりの架設量は,柱(18p)1.5日,レンコン梁(18p)1.5日,スパン梁(12p)1日の全4日とし,その後,PC鋼材の挿入と2次緊張を2日,ハーフPC版敷設を2日で完了する計画とした.PC部材の架設タクト工程は1工区あたり実働8日とし,1フロアを約1ヶ月で完了する工程で計画した. 5.PC工事報告 5.1 PC部材の製作 レンコン梁は室ごとに異なる床レベルに対応するために部材毎に梁主筋・PCシースの配置が異なること,鉄骨部材を固定するアンカーが多数打ち込まれ,配筋納まりが複雑であったことから製作初期には作業が深夜にまで及んだが,製作手順の見直しなどで架設工程に合わせた部材供給ができた. 5.2 PC部材の施工 桁行全長への3次緊張用PC鋼材の通線は入口側にターンテーブル,出口側にウインチを設置して出口側からウインチでPC鋼材を巻き取るように行った.写真-4にターンテーブル設置状況を示す.プレストレス導入に伴う外端柱の倒れ変形量を実測すると3~8mmであり,概ね推定値に合致していた.なお,桁行方向の作業緊張力は試験緊張により数値を定めて管理した.写真-5に柱・梁架設時全景を示す. 写真-4 ターンテーブル設置状況 写真-5 柱・梁架設時全景 6.まとめ 建物長さが100mを超える長大建物にプレストレスを導入した事例は少なく,医療施設への適用事例となるとごくわずかである.今回採り入れられた設計手法や施工技術,製作方法と実績は,今後の財産となるものと期待される. Key Words:PCaPC造,長大建物,PC圧着レンコン梁,病院 山内誠司 鈴木晋 井手章太 市澤勇彦 技報 第14号(2016年)53

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