技報第14号
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3.3 中庭外壁工法検討 下関市教育委員会文化財保護課の指導の下,工法検討を行った. ・登録有形文化財としては外観が対象,中庭外壁は対象外 ・対象外ではあるが文化財保護の観点から建設当時の復元を望む(対象外なので最終的には発注者の判断) ・次点としては現状維持が理想的 (浮上り状態が危険な状態で,仕上材を落とすことへは理解) ・昔の施工状態や既存漆喰などのサンプルを保存しておけば将来的に復元をすることも可能 ・有形文化財の対象となっている外壁と同様の形で改修も可 ・別の材料を使用するが建設当時の姿に戻すというのも可 結果,発注者の要望を踏まえ4つの工法案を提示し,それぞれにおけるコスト,工程表を作成,提出した. ① 煉瓦現し(劣化部補修共) 煉瓦の劣化状態から止水対策に難あり ② モルタル下地(覆輪目地切り)+石調塗装仕上げ 外周部と同様の仕上,漆喰とは異なる ③ モルタル下地(覆輪目地切り)+漆喰仕上げ コストもさることながら工程が最もかかる ④ 漆喰仕上げ(覆輪目地切り) 煉瓦直に漆喰では将来的に再度浮く可能性あり. 総合的な判断の結果,中庭外壁改修工事は② モルタル下地(覆輪目地切り)+石調塗装仕上げで行うことで決定された. 4.施工 4.1 外周部施工状況 外周部施工状況を以下に示す. 4.2 中庭部施工 工法決定のための調査,協議に時間を費やしてしまったため,工事開始が4カ月近く遅れてのスタートとなった.そのため,工事完了後に予定されていた,中庭での講演会や結婚式等の催しに対し,一時足場を解体し対応する必要が生じた. また,東京駅改修にも使用された,伝統建築技法である覆輪目地に対し,当社の協力業者には技能者がおらず,日本漆喰協会に協力を要請,福岡県の専門業者を紹介してもらった.覆輪目地は通常タイルや煉瓦目地部分に使用される.本工事においてはモルタル下地面に化粧横目地として再現する必要があった. 実際工事を行ってみると,覆輪目地の施工を行うモルタルの乾燥条件が非常に厳しく,乾燥が十分でなければ横目地が垂れてしまい,乾燥しすぎると目地がきれいに切れなくなった.目地の不良が生じると,下地モルタルをはがしやり直す必要があった.このため,1サイクルの施工に半日を要し,1サイクル当たりの施工範囲は4m2程度であった. 5.まとめ 本建物の施工を経て得られた知見を以下に示す. ・歴史的建築物の改修工事には工法決定に充分な調査と協議の期間を見込んでおく.調査においては改修の変換を含め,建築物修繕の遍歴を調べることも重要である. ・歴史的建築物や文化財に用いられた特殊伝統技能は記録として保存してゆく. ・煉瓦造直への漆喰施工は剥落の可能性があり,モルタル下地を設けることが望ましい. ・モルタル下地への横化粧目地の施工は特殊な技能を要する. また下地の乾燥条件が非常に厳しいものとなるため,天候や時間管理に注意が必要.施工期間も充分見ておく. Key Words:登録有形文化財,外壁改修,覆輪目地,漆喰壁 恒広哲雄 写真-2 外周部施工状況 写真-4 外壁改修工事完了 写真-3 中庭施工状況 技報 第14号(2016年)65

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